この記事では、韓国の共同養育への移行について紹介しています。
家裁は離婚について積極的な関与を行うように制度改革されたようですが、
お互いに不満が残る2ヶ月に1度、2時間の面会交流を斡旋させておいて
「面会交流に積極的」という日本の家裁の認識はもはやアジアの中でも
通用しなくなってきています。
日本の裁判官、弁護士も含めて、まず法曹業界が認識を変え、
離婚後の子の養育のあり方についてともに議論するテーブルにつくべきです。

http://mainichi.jp/life/housing/news/20100804ddm013100186000c.html

親子が別れる時:離婚を考える 韓国の制度改革 養育費、面会…家裁が確認

毎日新聞 2010年8月4日 東京朝刊

 ◇「子の利益」を重視/両親への教育、指導も

 離婚後の親子のかかわり方をめぐって欧米を中心に制度改革が進む中、韓国でも08年6月に協議離婚制度の改正法が施行された。養育費の支払いや面会交流についての協議書を家庭裁判所に提出しなければ離婚できないのが大きな特徴だ。「離婚=縁切り」という伝統的な離婚観は日本と同じ韓国で、なぜ改正が実現したのか。研究者や現地の家裁調査官に背景を聞いた。【反橋希美】

 法改正の柱は次の3点だ。
 (1)離婚時、夫婦は離婚に関する説明会に参加し、子どもに与える影響などを学ぶ
 (2)軽率な離婚防止のため、養育する子がいる場合は、(1)の説明会から3カ月を経なければ離婚できない(熟慮期間の設置)
 (3)親権者や面会交流の方法を記した協議書を家庭裁判所に提出する

 親権は単独でも父母共同でも持てるが、日本と同様、母親が持つケースが大半という。
 韓国家族法に詳しい山梨学院大の金亮完(キムヤンワン)准教授は「97年の通貨危機による不況で、離婚後、双方の親から引き取られない子どもたちが増え、社会問題になった」と法改正の背景を説明する。政府機関が06年に行った調査では、離婚家庭の8割が養育費の支払いを受けておらず、定期的に面会交流をする家庭はわずか1割。離婚が増える中、子どもに与える影響への懸念も要因になった。

 家裁に提出する養育の協議書には、養育費の支払口座や、面会交流の日程、面会する場所まで書き込む欄がある。源泉徴収票の添付も義務付けられており、養育費の額が所得とかけ離れていないかどうか確認される。昨年からは離婚時の作成書類を使って、養育費を払わない親からの取り立てを強制執行できるようにもなった。

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 日本ではいまだに養育費や面会方法を取り決めずに離婚することができる。「子どもの福祉に反する」などの批判がある一方で、ドメスティックバイオレンス(DV)の被害女性を擁護する立場からは「暴力から逃げるために一刻も早く離婚したい人もいる」と、韓国のような改正に反対する声がある。
 同じような反発は韓国内でもあった。このため改正法にはDVなどの場合は熟慮期間を免除してすぐに離婚できる規定が設けられている。ソウル家庭法院(家裁)の調査官、宋賢鐘(ソンヒョンジョン)さんは「子どものことを決めずに離婚できる弊害のほうが問題視された」と説明する。
 法改正後の変化について、宋さんは「元配偶者に子どもと面会させたがらなかった親が、家裁の教育を受け、面会をさせるようになるケースが現れている」と話す。
 ソウル家庭法院では今年1月から、対立が激しい両親の意思疎通を助ける「養育手帳」も配布している。面会時に気を付けてほしいこと、相談事などを書き、面会の際に子に持たせる。また、子どもの意見を聞く重要性が認識されるようになり、聞き取り方などを解説した「意見聴取指針書」も作られ、全国の裁判所で使われているという。

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 こうした韓国の制度は日本でも採用できるのだろうか。金さんは「子どもの利益を考える観点から、現状の日本の制度は早急に再検討すべきだ。韓国と同じ制度を導入するのであれば、協議書のチェックなどの事務作業が増えるため、家裁の処理能力をより充実させる必要があるだろう」と話している。

「養育手帳」(左)では、同居親が左ページに「どんな生活をしたか」などを書き、別居親が書く右ページには「子どもとどう過ごしたか」「相談したいこと」の欄がある。右は「子どもの意見聴取指針書」