この間、積極的に離婚後の親子のかかわりについて問題提起してきた毎日新聞の記者のレビューです。

自身も離婚と面会交流の経験から記事を書いたことが述べられていますが、
内容については、面会交流や共同養育が「政策論」として述べられ、そもそも子育てが権利として認識されていないことによる議論の貧しさにまでは、言及されていません。

私たちは会わせるべきか否かという母子家庭のための議論しているわけではありません。
そもそもこういう議論が成り立つなら、離婚していない家庭においても、手元で子どもを育てるべきか否かという議論から始めなければならず、育児をする父親を奨励しつつ、離婚したら会えないのはどうしましょうというのであれば、一面的です。

たとえば、婚姻中も子どもは手元で育てるべきではないというのが科学的に証明されれば、親は施設に預けて子育てをするべきだという議論はありえるでしょうか。
科学的な実証の積み重ねが共同親権を実現してきたのは事実ですが、海外で「相当なる面会交流」が認められてきたのは、それが親の権利として否定できなかったからです。

親が自分の経験を子どもに伝えようとし、そのことに喜びを感じるのは自然権です。

その点について触れないままの記事のレビューは、単なる政治的な声の大きさで、議論の方向性を決めようとする点で、政治的なバランスをとったに過ぎません。

また、施設や支援が整わないから、原則共同親権にしないという意見も後付です。
立法によって、自治体や行政に義務が課せられ、施設や支援が整えられていくというのは、DV法に限らず、多くの法律で知られてきたことです。この記者がこの点について知らないはずもありません。
要は、意識を変えるのは無理だから問題の解決も部分的なものに止まるべき、
というのが結論で、多面的な側面から問題をとらえてきたにしては、歯切れの悪い「感想文」ですね。

http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20100831ddm004070131000c.html

記者の目:離婚と親子のかかわり=反橋希美(大阪学芸部)
 ◇別居親との面会は子の権利--反橋希美(そりはし・きみ)

 離婚すると夫婦は他人。では親子は--。離婚後に離れて住む親と子のかかわりを考える企画「親子が別れる時~離婚を考える」を5月、本紙くらしナビ面に連載し「離婚しても親子は親子」と必ずしも言えない現状を報告した。離婚後の子どもの心と体を育てるのは養育費と、離れて住む親と会う面会交流。親権者さえ決めれば離婚できる現在の協議離婚制度から、この二つを取り決めてから離婚する仕組みに改めるべきだ。

 この問題に関心を持ったきっかけは自分の離婚だった。当時、私が親権を持った長男は3歳、長女は8カ月。子を元夫に会わせるには私が連れて行かねばならない。元夫と顔を合わせるのは気まずいが「親子の交流は必要」と考え、離婚時に養育費と併せ面会についても話し合った。だが周囲は、上の世代ほど「なぜ会わせるの」と困惑した。

 国が5年ごとに実施するひとり親世帯の調査で、養育費の支払率は約2割(06年)。極めて厳しい数字だが、同調査で面会交流は実施状況すら把握されていない。「離婚=縁切り」というイエ制度からの離婚観がいまだに根強いことを肌で感じた。

 ◇違う価値観知り、たくましく育つ

 父母の一方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係および直接の接触を維持する権利を尊重する--。日本が94年に批准した子どもの権利条約の文言だ。欧米では80年代ごろから離婚の増加とともに子どもの福祉を重視する潮流が生じ、離婚後も両親が子の養育にかかわる「共同親権」が広がった。子どもは普段は一方の親と暮らすが、隔週2泊3日程度、別居親と過ごす。

 日本は一方しか親権を持てない単独親権制だ。面会交流は近年、裁判や調停で広く認められるようになってきたが「子が嫌がっている」と親権者が強く拒否すれば、却下されることも少なくない。書類の親権者欄にチェックを入れるだけで協議離婚が成立する現行制度で、面会交流を取り決めている人は少ない。

 面会交流が広がらない一番の要因は、子が別れた親に会う意義を見いだせないと考える人が多いからではないか。

 私は、多くの場合、親子の交流は意味があると思う。幼いころに親の離婚を経験した男性(39)は祖母に「母は死んだ」と育てられた。成長し祖母との閉鎖的な関係に悩んでいた時、母の生存が分かり、離婚理由を聞いたことが生きる力を取り戻すきっかけになった。「テレビの再会番組みたいな劇的な感動はない。でも何かふに落ちた」という男性の言葉が印象的だった。

 離婚家庭の子どもたちが交流し助け合うグループの運営にかかわる東京国際大の小田切紀子教授(臨床心理学)は「一概には言えない」としつつ「別居親と交流がある子は同居親といい関係が築ける傾向がある」と話す。両方の親の価値観に接すると、同居親と過度に依存し合ったり、逆に反発が集中しにくくなる。

 親子の面会を援助する家庭問題情報センター(東京)の山口恵美子さんは「あんな父親でも会わせる意味はあるの」と相談してくる母親に「あなたは完ぺきな親?」と問う。山あり谷ありの面会を経て、たくましく育つ子たちを見てきた経験から「反面教師でも、親を知ることが自我形成につながる」と確信しているという。私も同意見だ。

 ◇「共同親権」の原則化は疑問

 では共同親権を導入すべきか。私は選択肢としてならよいが、原則化には賛成できない。理由は「会わせられない」人の存在だ。離婚原因に家庭内暴力(ドメスティックバイオレンス=DV)や精神的虐待を挙げる人は少なくない。今でも調停や裁判で面会を命じられてもうまくいかないケースが多々ある。欧米のように、安全な面会援助施設や、離婚前後の両親の相談に乗る機関の整備が先決だ。

 当面の手立てとして参考になるのが、離婚観が近い韓国だ。養育費支払いと面会の方法を取り決めた計画書を裁判所に提出しなければ離婚できない。離婚時に作成した書類で養育費取り立ての強制執行もできる。08年以降に法が改正された結果だが、現地の専門家は「親たちの意識が変わってきた」という。

 韓国方式の導入にはそれなりの公費投入が必要だが、効果はある。離婚後、何年も紛争が続くほど対立が激しい夫婦は全体から見れば少数で、一時の感情で交流のきっかけを失っている人たちも相当数いる。前述した施設や機関の整備を進め、「養育費と面会交流は子の当然の権利」との認識が広まれば、スムーズに交流できる人も多いはずだ。親が離婚する子どもは年間24万人。本気で取り組むときだ。

==============

 ご意見をお寄せください。〒100-8051毎日新聞「記者の目」係/kishanome@mainichi.co.jp