kネットは、2010年9月7日に、
最高裁判所宛に以下の要請をしました。
事前に最高裁判所前でアピールをし、
要請には4人が参加しました。
最高裁判所は秘書課が対応。
要望書は関係部署に回されるそうです。

家事事件の運用改善に関する要望書

2010年9月7日

竹﨑 博允 最高裁判所長官 様

東京都新宿区西新宿6-12-4コイトビル3階
共同親権運動ネットワーク

 私たちは主に離婚をきっかけに子どもと会えなくなった親のグループです。

日々、子どもと会うことが困難になった親たちの相談を受け付けています。

 離婚は家庭裁判所で扱われ、その際、親子の面会交流について取り決められることがありますが、実際には家裁では親権のみ決められ面会交流や共同監護について積極的な斡旋をしていない場合が多いと見受けられます。また、面会交流の申し立てをしても月に1回以上の面会交流を確保できるのが4人に1人と、同居親の拒否感情によって面会が極めて限定され、合意の履行も同居親に委ねられているのが実態です。

 他方、子どもの面会を使って慰謝料を請求されたりという相談を頻繁に私たちは受け付けます。また、裁判所を経由すれば母親に親権の90%が行き、比較的母親の求めた面会交流の斡旋には裁判官が少ない基準ながらも理解を示すことがある一方、父親の面会交流の申し出はよくても1ヶ月に2時間などと「犬の散歩」のような頻度と時間が一般的になっています。これらは、父親に意味のある子育てなど難しく、子どもの世話は母親がすべきだという意識に基づいていると考えられます。こういった裁判所の姿勢は、他方でシングルマザーを大量に生み出し、孤立化させています。最近の虐待死事件の背景には、このような裁判所の姿勢を反映した単独育児を当然視する社会認識があります。私たちから見ると、裁判所が子捨ての斡旋をしているかのようです。国連子どもの権利委員会は、今年6月、いわゆる「連れ子養子」について、家庭裁判所の許可なく行われることについて懸念を表明しましたが、日本の家裁は親の再婚によって面会交流の申し立てを却下するという、まったく正反対の運用をしてきました。「家庭の安定」が「子どもの福祉」とは必ずしもならないことは明らかです。

 また子どもを連れ去られた親が子への面会を求めると、再連れ去りを懸念して面会を拒否する親の拒否感情を「高葛藤」と言い換えて面会を制約したり限定的で曖昧な面会交流しか認めないことがままあります。このような家裁の取り決めは、かえって当事者間の合意を長続きさせず、子どもも面会交流を楽しめない結果になるのは明らかです。家庭裁判所はそのフォローアップをすることなく諸外国で100日が相当とされる面会交流の基準に比べると100分の1の面会しか認めません。法的にも可能な共同監護の手法についても知識や専門性がないとしか見えません。

家庭内暴力に対し、犯罪化と刑事罰の適用が進められてきました。親が他方の親の同意を経ず子を連れ去り会わせないというのは、一般的には誘拐であり、故に海外では親であっても誘拐罪が適用されてきました。裁判所の形だけの「家庭の安定」を強調するだけの運用は、両者の流れに逆行するものです。

単独親権制度は、離婚・未婚時のみ戦前からの規定が維持されたに過ぎず、現在では何ら合理的な理由がありません。現在の法制度のもとでも利用者本意で裁判所が運用され、裁判所がその信頼を取り戻すためにも以下要望します。

1 「家庭の安定」や母性優先などを根拠にして監護者を決定したり面会交流を斡旋したりするのではなく、裁判、調停・審判を通じ、面会交流に積極的な親に監護権やより多くの養育時間を与えるように、裁判所の運用を変えてください。

2 高葛藤を理由に面会交流を認めなかったり制約したりするのではなく、交代居住も含め、十分な面会時間を確保した上で詳細な面会交流を取り決め、また違反した場合にも間接強制の執行が可能な文言での取り決め文を結ぶよう調停や審判、裁判を運用してください。

3 子どもとの面会を使った慰謝料請求や離婚に有利になる条件の請求など、いわゆる人質取引を裁判所で認めないよう、職員の研修をしてください。また、問題が明るみに出た場合は、厳正な処分をしてください。

4 離婚後の共同養育や面会交流への意識を高めるため、裁判所の職員が、男女問わず子育てしやすい環境を整えてください。男性の育児休暇の取得や子どもが小さいうちの転勤の抑制などが、昇進や昇給に結びつかないような人事制度を整えてください。