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共同親権運動 会報 7号

共同親権運動 会報 7号

1面の日弁連シンポジウムに関する同時期のkネットメルマガの内容より抜粋。

5月15日、日弁連はシンポジウム「離婚後の子どもの幸せのために
~面会交流、養育費を中心として~」を開催しました。
開催前、kネットでは、会場の弁護士会館前でリーフレット
「別れたあとの共同子育て」を配布しました。
来場者の多くが受け取っていく中、配布後、会場に入ったメンバーは驚きました。
受け取りを拒否した方の多くが主催者として壇上で発言したからです。

(1)日弁連は共同親権に反対

冒頭、日弁連副会長の向井諭さんは、
「面会交流は子どもの権利、現在の法体系の中でどういう手段がとれるか」
という発言で、集会の趣旨を説明しました。
たしかに、面会交流は子どもの権利ですが、親の権利なくして
面会交流が成り立つわけもありません。
また、「子どもの福祉」を理由に面会交流が不可能になる現在の家裁のあり方
は問われることなく、
親子引き離しの問題を訴えてきた別居親の主張は関心の範囲外でした。

その後発言した、両性の平等に関する委員会副委員長の吉田容子さんは
「別居中(共同親権時に)面会交流は困難になる。
離婚後スムーズに行く場合もある。
親権が単独か共同かということではない」と説明し、
「離婚後にまったく新たな関係性をつくるのではない」と言いました。

シンポ中、男女共同参画が今よりも進まなければ、離婚後も対等な
関係など望み得ないと、韓国の例も挙げながら何度も強調される場面がありました。

親権のないことによって、「親権者じゃないから」と子どもの成長にかかわる
ことが否定されてきた別居親にとって、このような発言は、
問題の所在を意図的にすり替えるものでしかありません。
離婚後共同養育を進めることは、
男女共同参画を促進することにもつながると私たちは考えるからです。
主催者にそのための手段を積極的に提案しようとする意図は
感じられませんでした。

また、別居中に会えなくなることは、トラブルをおそれて面会を否定する
法曹業界の慣行でもあり、それを当事者のせいだけにするのは筋違いです。

(2)日弁連は面会交流に否定的

主催者からは、しんぐるまざあず・ふぉーらむのアンケートを挙げ、
監護親が面会交流に消極的な理由が説明されました。
DVや虐待、子への無関心、養育費不払い、監護親の再婚、そして
はらいせ、いやがらせ、という内容でした。

その後の討論では、
監護親の再婚や、はらいせ、いやがらせで面会が拒否される現状は
問題とされず、DVや児童虐待についての困難事例が取り上げられました。

主催者側の発言も、
「結婚生活中の協力あって、離婚後も協力ができる」
(だったら離婚しないでしょ)、
「子育てを母親まかせにしていた夫婦が離婚後も協力できるのか」
(それを理由に面会を否定するならそもそも子育てが問題ではない)、
など、問題の所在を当事者のせいにして、親子引き離し問題への建設的な
提案をする姿勢に欠けました。

共同養育や面会交流はお互いの共同作業がかならずしもなくても、
受け渡しなど第三者の関与を求め、
「非関与という協力」をすることによって可能です。
養育費の支払いについては、海外で採用されているさまざまな強制の手段
が紹介されましたが、面会拒否が軽犯罪法や収監の対象になることに
ついては触れられませんでした。
日弁連は、面会交流には否定的な見解のようです。

(3)子どもに会いたい親をレッテル貼り

シンポでは、DVや児童虐待についての困難事例が取り上げられました。
DVや児童虐待について、親の養育が制限されるのは婚姻中同様、
離婚後にもあるでしょう。刑事罰の厳格適用や加害者への対応は
今後の課題でしょうが、それはDVや児童虐待施策の問題です。

討論のパネリストは、被害者支援に携わってきた人たちでしたが、
「虐待している親やDV親はとても子どもに会いたがる」
「引き離された親の心情としては、欲求充足のための子どもとの
面会ではないかと『思える』」
「よりを戻すために子どもに会いたがっていると『思う』。
そういう場合にはどうすればいいんでしょうか」
など現場の人たちと言われる「専門家」の発言と懸念が続きました。

もちろん、子どもとの面会を求める親の中にそういう親が
いることは否定できません。しかし親が子どもに会いたがる
のは欲求としていけないことでしょうか。
婚姻中、意図的に子どもと会うことを自粛する親がいるでしょうか。
私たちは、子どもと会わせないことだけで、
DVや児童虐待の問題が解決するとも思いません。
悪意の加害者には引き離しのみでは意味がないからです。

同時に、子どもに会いたい親の相談を受けている私たちは
法曹業界の慣例で子どもと引き離され、手放せば子どもと
会う保障がないため、親権を奪われないように離婚に応じる
ことのできない親が多くいるということも知っています。

女性相談と別居親の相談と見ている現実が違うのはわかりますが
別居親側のことを想像のみで語るこういった発言によるシンポは
子どもを会わせたくない親の感情を背景にした、
別居親への偏見に基づくレッテル貼りです。

(4)面会ができないのは当事者のせい

講演した、法学者の棚村政行さんは、「理念も制度も支援もない。
問題を当事者たちだけのせいにするべきではない」と発言しましたが
男女共同参画が進まないから、子どもに会えなくてもしょうがない
という日弁連の意図は、制度の欠陥や社会構造を当事者のせいにすることに
ほかなりません。

とくに、有責主義や単独親権制度のもと、離婚当事者は
したくなくても、弁護士にアドバイスされ、相手の欠点を
虚実交えて過剰に言い立てることで関係がいっそう悪化します。
その結果、その後の共同養育の基盤が破壊されることについては
日弁連は無自覚です。

養育費が払われなくなることは強調しますが、
少なすぎる面会で不自由さを感じ、
途中で面会が途絶える別居親の心情には配慮がありません。

何より、子どもの連れ去りを容認し、
離婚するまで面会をさせない、という人質取引が
当然の慣行になっている法曹業界の実態に触れないまま、
「離婚後の子どもの幸せのために」と言っても説得力に欠けます。

シンポでは、途中で退席する人の姿が目に付きました。
弁護士たち自身が、母子の安定のみが「子どもの福祉」
とされてきた現状をとらえ返し、子どもの権利とはどういうものか
再考する時期ではないでしょうか。

面会交流と養育費を天秤にかけ、
共同養育には否定的、養育費の取り立てには積極的ということであれば、
離婚後の性別役割分業を強調することにほかなりません。
共同養育も養育費の徴収も面会交流支援も、共同親権に向けた法整備の中で
一体的に進めるべきです。

(5)シンポ参加者の声

kネットにはシンポジウムに参加した当事者の感想が寄せられています。

・「『面会に消極的である理由のひとつに、
〝単なるいやがらせ〟というのもあるにはあるが、
これもそうなる理由があるんですよね』
という発言には、失望を通り越して呆れるほかなかった。
発言者は、
『養育費を支払わない理由のひとつに、
〝単なるいやがらせ〟というのもあるにはあるが、
これもそうなる理由があるんですよね』
と言っているのと同じだと自分で気づかないのだろうか?(T・男性)

・「共同親権になったら、ADRやペアレンティングコーディネーター
など、弁護士以外の人が活躍する機会が増えるはず。弁護士たちは
慰謝料が取れなくなり金にならないから共同親権に反対なんじゃないの」(H・男性)

・「子どもといっしょに暮らせないDV被害者の立場としては
昨日の話は遠い世界のものでした。同じDVでもこうも違うのかと。
あの弁護士さんにお願いしたら私は子どもに会えるようになるのでしょうか。
聞きたいことがたくさんあったのに質問できませんでした」(U・女性)

・日弁連の子どもの面会および養育費の問題に対する知識レベルは、
極めて幼稚で浅はかなレベルであることだけは、よく理解できた。
面会と養育費をバーター取引の材料にしてはいけない、
というのは世界の常識である。
次回、同じようなシンポジウムを行うならば、
『離婚後の子どもの幸せのために』
というタイトルはカットし、
『面会の前に養育費を請求する権利、
およびDVだったら子どもに会わせなくてもよい権利のために』
というタイトルにすべきだろう。(K・男性)

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