ハーグ条約の締結と国内親権法の整備を
一体的に進めることを求める要望書

菅 直人 内閣総理大臣 様
岡田克也 外務大臣 様
千葉景子 法務大臣 様

2010年6月23日
東京都西新宿6-12-4コイトビル3F
共同親権運動ネットワーク

私たちは、主に離婚を契機に自分の子どもと会うのが困難になっている親のグループです。
鳩山由紀夫首相が2月25日に、「国際的な子供の奪取の民事面に関するハーグ条約」加盟について
「日本は特殊な国だと思われつつあるから、できるだけ早く、結論を出すことが重要だと指示した」と述べて以来、
国境をまたいだ子の奪取問題の議論が高まってきました。
法務省の見解は、以前から国内の法整備を行わなくても、現行法でハーグ条約の加盟は可能だというものです。
たしかに、面会交流の調停を家裁に申し立てるこ とができ、子の返還についても、
子の引渡し請求や人身保護請求という手続はあります。
しかし、これらの手続があるということと、実際に子どもと会えたり、 子どもが返還されるかどうかということとは別の問題です。
実効性のある法手続がない状態で、条約加盟が適切かどうか、議論をするのは意味がありません。
問題は、海外から子どもを連れ去った親から子どもを海外へと返還させるかどうかではなく、
単独親権制度により離婚時に親権が片方の親から奪われることで す。
身柄を確保すれば親権を取れるため、親による子の連れ去りや面会拒否が常態化し、
親が子どもの養育にかかわろうと思っても不可能になります。
その結 果、子どもの奪い合い紛争が過熱化するとともに、
養育責任が問われず別居親の養育放棄が日常化し、他方ひとり親には過度の養育負担がかっています。
こう いった国内状況は、共同養育が一般化した海外から見ると、「特殊」で理解不能でしょう。
海外からDV被害を受けたり誘拐罪に問われる母子の返還は非情だという意見があります。
もしそうであれば、国内に連れ去った母子の立場を議論する以前に、 ハーグ条約加盟国に対しDV施策の徹底を求め、
海外での被害邦人保護に尽力するとともに、海外の親子法の改善を促すのがまず第一の日本政府の役割というこ とになります。
他方、海外から遠い異国である日本に連れ去られた親の苦悩を、日本政府は想像したことがあるのでしょうか。
ハーグ条約は、双方の親から子ど もが養育されることを保障するために、返還も含めた国際的な手続きを定めたものであり、
子の返還のみが唯一の手段ではありません。ハーグ条約加盟を母子保 護の文脈のみで議論することは一面的です。
日本で子どもを連れ去られ会えなくなった父親、日本で父親に子どもを確保され会えなくなった母親、
何より、日本 に連れ去られ片親に会わせてもらえなくなった子どもへの配慮に欠けています。
国内在住で子どもと会えなくなった外国籍の親がこの中に含まれます。
私たちの 子どもも親と引き離されています。
国内から子どもを連れ去られた親のために、ハーグ条約未加盟国に返還を促したり、
共同養育を広めるのも日本政府の役割で す。
子どもがどこにいようとも、双方の親と子どもとの接触と養育が可能となる施策の一環として、
ハーグ条約加盟と、国内法整備を考えるべきです。
親権や共同養育についての抜本的な法改革をすることなしに、ハーグ条約の加盟を先行させることは、
以上述べた現在不利益を被っている当事者を置き去りにすることです。
国内の法整備とハーグ条約加盟に向けた国内の議論を深め、両者を一体的に進めることを私たちは求めます。