間接強制に関する3つの最高裁判例

 

取り決めた面会交流を拒否した際、間接強制による金銭の支払いを認めるかどうかでそれを可能とする判断を下したそうです。
これまで子どもを「会わせる」と言って親権を得て離婚をした上で離婚後に会わせない詐欺行為が頻発していたため、一定の抑止効果が期待できます。

なお、下級審ではすでに間接強制の支払いについて認める判例は多数出ており、最高裁家庭局が発行する「家庭裁判月報」の2012年8月号でも東京高裁が間接強制を命じた判例が紹介されています。

面会拒否へのペナルティの強化は民法766条改正によって「面会交流」が明文化された中で、当然の流れと言えます。

以下で閲覧できます。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0020Recent?hanreiSrchKbn=02&recentInfoFlg=1

 

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130401162949.pdf
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130401161551.pdf
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130401160937.pdf

 

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130401161551.pdf より一部抜

主 文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。

理 由
抗告代理人祖母井里重子の抗告理由について

1本件は,未成年者の父である相手方が,未成年者の母であり,未成年者を単
独で監護する抗告人に対し,相手方と未成年者との面会及びその他の交流(以下
「面会交流」という。)に係る審判に基づき,間接強制の申立てをした事案であ
る。

2 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) 相手方と抗告人は,平成16年5月に婚姻の届出をし,平成18年1月に
長女をもうけた。
(2) 平成22年11月,相手方と抗告人を離婚し,長女の親権者を抗告人とす
る判決が確定した。
(3) 平成24年5月,札幌家庭裁判所において,抗告人に対し,原々決定別紙
面会交流要領のとおり相手方が長女と面会交流をすることを許さなければならない
とする審判がされ,同審判は,同年6月確定した(以下,この審判を「本件審判」
といい,原々決定別紙面会交流要領を「本件要領」という。)。本件要領には,①
面会交流の日程等について,月1回,毎月第2土曜日の午前10時から午後4時ま
でとし,場所は,長女の福祉を考慮して相手方自宅以外の相手方が定めた場所とす
ること,② 面会交流の方法として,長女の受渡場所は,抗告人自宅以外の場所と
し,当事者間で協議して定めるが,協議が調わないときは,JR甲駅東口改札付近
とすること,抗告人は,面会交流開始時に,受渡場所において長女を相手方に引き
渡し,相手方は,面会交流終了時に,受渡場所において長女を抗告人に引き渡すこ
と,抗告人は,長女を引き渡す場面のほかは,相手方と長女の面会交流には立ち会
わないこと,③ 長女の病気などやむを得ない事情により上記①の日程で面会交流
を実施できない場合は,相手方と抗告人は,長女の福祉を考慮して代替日を決める
こと,④ 抗告人は,相手方が長女の入学式,卒業式,運動会等の学校行事(父兄
参観日を除く。)に参列することを妨げてはならないことなどが定められていた。
(4) 相手方は,平成24年6月,長女と面会交流をすることを求めたが,抗告
人は,長女が面会交流に応じないという態度に終始していて,長女に悪影響を及ぼ
すとして,相手方が長女と面会交流をすることを許さなかった。
(5) 相手方は,平成24年7月,札幌家庭裁判所に対し,本件審判に基づき,
抗告人に対し本件要領のとおり相手方が長女と面会交流をすることを許さなければ
ならないと命ずるとともに,その義務を履行しないときは抗告人が相手方に対し一
定の金員を支払うよう命ずる間接強制決定を求める申立てをした。これに対し,抗
告人は,長女が相手方との面会交流を拒絶する意思を示していることなどから,間
接強制決定が許されないなどと主張している。

3 原審は,本件要領は,面会交流の内容を具体的に特定して定めており,ま
た,長女が面会交流を拒絶する意思を示していることが間接強制決定をすることに
なじまない事情となることはないなどとして,抗告人に対し,本件要領のとおり相
手方が長女と面会交流をすることを許さなければならないと命ずるとともに,抗告
人がその義務を履行しないときは,不履行1回につき5万円の割合による金員を相
手方に支払うよう命ずる間接強制決定をすべきものとした。

4(1) 子を監護している親(以下「監護親」という。)と子を監護していない
親(以下「非監護親」という。)との間で,非監護親と子との面会交流について定
める場合,子の利益が最も優先して考慮されるべきであり(民法766条1項参
照),面会交流は,柔軟に対応することができる条項に基づき,監護親と非監護親
の協力の下で実施されることが望ましい。一方,給付を命ずる審判は,執行力のあ
る債務名義と同一の効力を有する(平成23年法律第53号による廃止前の家事審
判法15条)。監護親に対し,非監護親が子と面会交流をすることを許さなければ
ならないと命ずる審判は,少なくとも,監護親が,引渡場所において非監護親に対
して子を引き渡し,非監護親と子との面会交流の間,これを妨害しないなどの給付
を内容とするものが一般であり,そのような給付については,性質上,間接強制を
することができないものではない。したがって,監護親に対し非監護親が子と面会
交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において,面会交流の日時又
は頻度,各回の面会交流時間の長さ,子の引渡しの方法等が具体的に定められてい
るなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合は,上記審判
に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができると解するのが相当である。
そして,子の面会交流に係る審判は,子の心情等を踏まえた上でされているとい
える。したがって,監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなけれ
ばならないと命ずる審判がされた場合,子が非監護親との面会交流を拒絶する意思
を示していることは,これをもって,上記審判時とは異なる状況が生じたといえる
ときは上記審判に係る面会交流を禁止し,又は面会交流についての新たな条項を定
めるための調停や審判を申し立てる理由となり得ることなどは格別,上記審判に基
づく間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではない。
(2) これを本件についてみると,本件要領は,面会交流の日時,各回の面会交
流時間の長さ及び子の引渡しの方法の定めにより抗告人がすべき給付の特定に欠け
るところはないといえるから,本件審判に基づき間接強制決定をすることができ
る。抗告人主張の事情は,間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではな
い。

5 これと同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用
することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 櫻井龍子 裁判官 金築誠志 裁判官 横田尤孝 裁判官
白木 勇 裁判官 山浦善樹)