ハーグ条約加盟にあたってのkネット声明

共同親権運動ネットワーク

声明:ハーグ条約加盟にあたってのkネット声明 

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 本日5月22日、「国際的な子の奪取の民事面に関するハーグ条約」(以下ハーグ条約)の加盟承認案が国会を通過した。これによって日本政府は国際的な人権保障の枠組みに新たに入ることになる。

このことを私たちは歓迎する。
 
 この条約はその前文にあるように、「不法な連れ去り又は拘束から生ずる有害な結果から子を国際的に保護すること」を目的として、子どもが元いた国での裁判管轄権に服するための迅速な返還の手続と、別居親子の面会交流の保護を条文に明記している。「子の利益が最も重要であることを深く確信し」という文言から先の目的文が続くように、この条約で用意される手続は第一に子どものためのものである。
 私たちは日本政府が、この条約の理念を国内外で今後いかに実現するかを注視する。この条約の加盟を日本が国際社会から強く要請された背景には、「子どもの連れ去り又は拘束」が、不法どころか裁判所での適正な手続の一環として組み込まれている、この国の異常な実態を、この国に住む人々が異常と認識してこなかったことにある。

背景には母親に育児の負担を負わせて、母子一体の子育てを擁護してきた日本の社会認識がある。離別や離婚に際して母子家庭の貧困を永続化させる社会制度は、それを利用する形で成立している。

単独親権が法的なお墨付きを与えた。そのため、連れ去って会わせない親の態度が「子どものため」として正当化され、子どもの養育にかかわり続けたい私たち親の思いは「ワガママ」として切り捨ててられた。
日本に住む子どもたちは、過去連綿と、なくさなくてもいい親をなくしてきた。

 この条約に対する「邦人保護」の文脈からの反対論が、これらいわゆる「文化」を擁護することで費やされたことを私たちは残念に思う。
 こういった議論は、子とともにあることで親でありたいと願う、すべての親の心情を踏みにじった。子どもと離れて暮らす母親の存在を貶めた。
 そして、条約未加盟国の日本出身者であるがために、不利になりながらも子どものために踏みとどまって、外国の慣れない法手続の中で苦闘している親たちの努力を損ないもした。
 その上、条約の背景にある考えにあるように、両方の親とのコンタクトを維持することが子どもにとっていいのなら、子どもが母親と日本にいることだけを「邦人保護」と呼ぶことはできない。

 むろん子どもは両親の子であり、両親が持つ多様な世界と触れ合う権利がある。そして自分の世界を選び取って成長する。子どもを連れ去られた親たちが、親子が親子のままでいられる保障のない日本に対し、「子どものために」返還を求め
るとしたら、それは私たちの側の問題である。

 日本はこの条約に加盟することによって、親の離別に際しての「親による子の連れ去り又は拘束」が不法であるとの国際的な合意の中に入ることを選択した。

 夫が妻を殴っても暴力は暴力である。同じく親が子どもを連れ去っても誘拐は誘拐である。

 この条約がいいか悪いかの議論はもう終わりにしよう。この条約の理念を国内で定着させること、それが未来の子どもたち、そして国際社会への、この国に住む私たち大人の責任である。

(2013年5月22日)