2017年6月1日

質問状

神戸新聞 代表取締役社長 高士 薫 様
5月30日配信記事「初の面会交流で娘犠牲 母苦悩の日々『答え出ない』」
執筆竜門和諒様ほかご担当責任者 様

共同親権運動ネットワーク

 

日夜の報道ありがとうございます。私たちの会は子どもと引き離された親のグループです。2017年5月30日にネットに配信された貴社の記事「初の面会交流で娘犠牲 母苦悩の日々『答え出ない』」について、貴社は被害者の母親へのインタビューをもとに記事を構成しております。私どもの会は、別居や離婚時の違法な実子誘拐とその後の片親引き離し行為の解決に取り組む被害者団体です。同時に、暴力防止の活動に取り組んでいます。この事件では母親側が被害者遺族であることはもちろんですが、容疑者とされる男性は、加害者とされるとともに自殺しており、解説・識者コメントの付した今回の記事の取り上げ方については一面的な部分があるので、ご提案とともに以下質問させていただきます。

 

1 記事においては冒頭「娘を面会に行かせたことは正しい選択だったのか」という問いが立てられ記事を構成しています。しかし、子どもにとって父母双方の家がともに自分の家庭であり、母親側が「会う会せない」を決める権限があるわけではありません。それに、父、母双方の家は別個の家庭であり、たまたま子どもを共有していたとしても別の家庭で起きた事件の社会的責任を被害者の遺族が負うこともできません。このような問いの立て方自体が、子どもの安全は母親が専ら担わなければならないという発想に立つものです。同時に、子どもと会う側に潜在的に問題があったという偏見がなければ、この問い自体が成り立ちません。

このような見地に立った取材を経て「父親の暴力性を見抜けなかった」自身の「母親としての落ち度」について母親が苦悩を深めるのは十分考えられますが、貴紙はこの点についてどのように考えますか。

2 4月23日の事件では、月に1回の取り決めの決定後の最初の面会で、父親が子どもを殺したと伝えられています。貴紙の報道でも父子関係は良好であったことが報じられています。自ら離婚を言いだした側であっても、親権を失い代償として年12回しか子と会う機会が得られず納得のいかない父親が絶望して事件を起こしたことも十分ありえます。家庭裁判所の手続きを経た面会交流は画一的であり、家裁を経ない場合でも「月に一度」という面会交流基準が流通しているため、それ以上の面会交流を母親側が進めることには抵抗感があり、母親側に支援者・弁護士がいたとしてもそれは同様です。だとすると事件は単独親権に起因するとも解釈できます。貴紙はこの点についてどのようにお考えですか。

3 記事では「父親は結婚後1年くらいから母親の言動に腹を立て暴言を吐くようになり、物を投げるなどの暴力を振るうようになった。侑莉ちゃんが生まれた後も、母親を寝かせずに説教することもあった」ということですが、確かに私どもの会に相談に来る父親も、妻から刃物を突き付けられ、一晩中寝ずに妻から説教を受けた経験を語る方は珍しくありません。このような状況で私たちは家裁を経てもなかなか子どもと会えない状況が改善できない人が少なくありません。このような行為をする側が子どもの監護を継続し、親権を得て子どもを引き離す状況について、貴紙は事件を教訓に、どのような解決策があるとお考えですか。

4 記事では母親が「事件後に初めて父親が休職していたことや精神科に通院していたことを警察から知らされ」たとのことです。父親の側は我が子を殺すまでの心理状態に追いつめられていたわけですが、たしかに、私どものような民間の別居親側や男性の支援者とつながる機会は男性の側には限られています。家庭裁判所も、家裁委員会に女性対象のDVの被害者支援の民間団体の関係者を選任することはあっても、男性や別居親支援の民間団体を招くことはなく、その他の協力関係も拒んでいます。父親の側の心理状態が明らかになり、面会施設の利用が低額になっても、男性や別居親に対する情報や支援が不足している現状が改善されなければ、当事者の管理を強めたところで、同様の被害を今後防止することは難しいと考えますが、貴紙はこの点について、本事件からどのような教訓を得ましたか。

5 記事は長崎県の事件を挙げ、「長崎県では1月、面会交流中に母親が殺害された。安全性の確認は家裁の責任である。調停をまとめた過程を検証し、子どもと関係者の安全を最優先に運営する制度を構築すべきだ」とのことです。この事件の加害者は子どもの父親です。長谷川氏の発言は、あたかも父親が「子どもの関係者」ではないかのような印象を受けますが、貴紙もそうお考えですか。

この質問状は公開のものです。6月15日までに上記住所まで書面にてご回答下さい。

神戸新聞質問状