2018年10月4日
質問状
沖縄タイムス 代表取締役社長 武富和彦 様
「木村草太の憲法の新手(86)共同親権 親権の概念、正しく理解を 推進派の主張は不適切」、「木村草太の憲法の新手(87)続・共同親権 父母の関係悪いと弊害大きい」
ご担当者 様
共同親権運動ネットワーク
日夜の報道ありがとうございます。私たちの会は子どもと引き離された親のグループです。2018年8月19日、9月2日にネットに配信された貴社の木村草太氏のコラム「木村草太の憲法の新手(86)共同親権 親権の概念、正しく理解を 推進派の主張は不適切」「木村草太の憲法の新手(87)続・共同親権 父母の関係悪いと弊害大きい」に関して、木村氏の共同親権に対する取り上げ方については一面的な部分があり、また同時に、事実認識に関して、別居親団体として見過ごせない点が散見できるので、木村氏の見解を掲載した貴紙に以下質問させていただきます。
なお、当会のほうから9月26日に読者センター、及び代表電話に対して、以下の内容について担当者から電話するようにお伝えしまし、稲嶺様にご対応いただけましたが、具体的な対応に関して明示されないままですので、書面にてお伝えいたします。
木村氏は8月19日配信の記事で以下のように述べています。
また、別居親が、主観的に「自分との交流は子の利益になる」と思っていても、DV・虐待・ハラスメントなどの要因で客観的にはそう認定できないことがある。そうした場合には、面会交流は避けるべきだし、ましてや親権を与えるべきではない。面会交流の不全は、裁判所か、別居親の問題であり、親権制度とは関係がない。
また、9月2日掲載の記事では、以下のように述べています。
この点、「裁判所は、別居親に監護の機会を与えてくれない」という批判の声もある。しかし、それは、裁判所の人員や運用に問題があって、裁判所が適切な判断をできていないか、あるいは、客観的に見て別居親の監護が「子の利益」にならないことによる。法律の定めるルールの内容に問題があるわけではない。
現在、裁判所も、DVからの避難に関する支援措置において、客観的な認定がなされていないことを指摘しています(2018年4月25日名古屋地裁判決)。保護命令の件数は年間2000件未満、面会交流調停の・審判の申立件数は1.3万件ですが、家庭裁判所で面会交流の取り決めがなされるのはここ数年50%代前半で推移しています(うち4割が取り決めを守られなくなっていることを2014年の日弁連アンケートは示しています)。
それとは別に、親権の取得率は女性が8割を超えています。別居親の割合に男性が多いのは事実ですが、配偶者間暴力の経験がある被害者の数は、女性で3人に1人、男性で5人に1人で、面会交流不全の数とやはり開きがあります。
以上の事実から、別居親のみがDV・虐待・ハラスメントの加害者だと想定することもできません。実際親権取得の男女割合に比して、児童虐待の加害者の割合は、実父の29%に対して、実母は57.3%(2012年)となっています。
この被害の割合と面会交流の取り決め率の開きの原因としては、親権取得のために子を手元に置くことが、弁護士の一般的な手法であることは常識であること(財団法人日弁連法務研究財団『子どもの福祉と共同親権』はしがき、から)が指摘されています。弁護士たちは、子どもと引き離された側から親権をはく奪することを職業柄知っているのでこのような記述をしています。
そうなると、DV・虐待・ハラスメントに関する客観的な認定をもとにして、裁判所が親権や面会交流について決めているとは言い難くなります。
なお、双方の対立関係が強いことについては、たしかに共同での養育の障害となることが想定できますが、必ずしも一方の親の責めにできないのであれば、それを親権はく奪の理由にすることは困難です。特に親権はく奪が自動的になされる別居親にのみその責めを負わせることはフェアさに欠けます。
上記のようなデータ、及び認識に基づき、私どもは面会交流の不全は親権制度の起因する子の奪い合いに対し、性別役割に基づいた男女不平等な民事介入(女性が専ら主体の実子誘拐は介入せず、女性が被害者とされるDVについては介入する)の放置は問題と考え、その改善を訴えています。共同親権とは、子どもの親は両親であり、その両親の関係は対等であるにすぎません。一方の親から親権をはく奪する法制度は人権侵害の解消を求めてきました。言うまでもなく私たちの運動は、「家族生活における個人の尊厳と両性の平等」を定めた憲法24条の理念を実現するためのものです。
そこで質問します。なお、以下の質問は木村氏に対するものですが、それを掲載したのは沖縄タイムズですので、沖縄タイムズの見解が別にあればそれも伺わせて下さい。
1 木村氏の記事では、別居親のみが面会や養育権の審査を受けるという前提で記述され、子を確保した側が親権を得るという「常識」を裏付けているように読み取れます。つまり、木村氏はそのことについて知っていますか。また沖縄タイムズは、そのことに気づいて木村氏の見解を載せましたか。
2 木村氏は「別居親が、主観的に「自分との交流は子の利益になる」と思っていても、DV・虐待・ハラスメントなどの要因で客観的にはそう認定できないことがある。」と述べて、面会交流や養育の機会が奪われることを正当化していますが、弁護士たちが、子の確保が親権取得の要件であることが常識と述べている以上、そのルール以上のDV・虐待・ハラスメントを評価する客観的な判断が裁判所でなされているとは思えません。客観的な評価がなされているという根拠を教えて下さい。こういった問題は、裁判所の人員・運用とは無関係と思います。
3 要するに木村氏は、子どもに会えない親は自分が意識していなくても、「DV・虐待・ハラスメント」の加害者なので、子どもに会えなくても仕方なく、親権が得られなくて当然と考えていますか。また沖縄タイムズ社も同様の見解ですか。
木村氏は、9月2日掲載の記事にて、以下のように述べています。
単独親権者が、子の福祉に反する決定をする危険を指摘するものもいるが、その場合には、親権者を変更すべきだ。共同親権を維持すれば、子の福祉を害する親にまで権利が残ってしまう。
4 私どもの会には、事実婚の破たんとともに、母親である親権者が親権を主張して引き離しを行ない、子どもとの交流が制限された方がいます。そのような方に現行民法でどのような救済措置がありますか。なお、最高裁判所は、子を再婚相手の養子にしたカップルからの実親への親権者変更を認めない決定をしています。代諾養子縁組については、国連子どもの権利委員会が2010年に改善の勧告を日本政府に対してしています。
この質問状は公開のものです。10月15日までに上記住所まで書面にてご回答下さい。
いただいた回答は、当会ホームページ等で掲載することがあります。
沖縄タイムズ質問状・担当なし
沖縄タイムス「木村草太の憲法の新手」への公開質問状
2018年10月4日
質問状
沖縄タイムス 代表取締役社長 武富和彦 様
「木村草太の憲法の新手(86)共同親権 親権の概念、正しく理解を 推進派の主張は不適切」、「木村草太の憲法の新手(87)続・共同親権 父母の関係悪いと弊害大きい」
ご担当者 様
共同親権運動ネットワーク
日夜の報道ありがとうございます。私たちの会は子どもと引き離された親のグループです。2018年8月19日、9月2日にネットに配信された貴社の木村草太氏のコラム「木村草太の憲法の新手(86)共同親権 親権の概念、正しく理解を 推進派の主張は不適切」「木村草太の憲法の新手(87)続・共同親権 父母の関係悪いと弊害大きい」に関して、木村氏の共同親権に対する取り上げ方については一面的な部分があり、また同時に、事実認識に関して、別居親団体として見過ごせない点が散見できるので、木村氏の見解を掲載した貴紙に以下質問させていただきます。
なお、当会のほうから9月26日に読者センター、及び代表電話に対して、以下の内容について担当者から電話するようにお伝えしまし、稲嶺様にご対応いただけましたが、具体的な対応に関して明示されないままですので、書面にてお伝えいたします。
木村氏は8月19日配信の記事で以下のように述べています。
また、別居親が、主観的に「自分との交流は子の利益になる」と思っていても、DV・虐待・ハラスメントなどの要因で客観的にはそう認定できないことがある。そうした場合には、面会交流は避けるべきだし、ましてや親権を与えるべきではない。面会交流の不全は、裁判所か、別居親の問題であり、親権制度とは関係がない。
また、9月2日掲載の記事では、以下のように述べています。
この点、「裁判所は、別居親に監護の機会を与えてくれない」という批判の声もある。しかし、それは、裁判所の人員や運用に問題があって、裁判所が適切な判断をできていないか、あるいは、客観的に見て別居親の監護が「子の利益」にならないことによる。法律の定めるルールの内容に問題があるわけではない。
現在、裁判所も、DVからの避難に関する支援措置において、客観的な認定がなされていないことを指摘しています(2018年4月25日名古屋地裁判決)。保護命令の件数は年間2000件未満、面会交流調停の・審判の申立件数は1.3万件ですが、家庭裁判所で面会交流の取り決めがなされるのはここ数年50%代前半で推移しています(うち4割が取り決めを守られなくなっていることを2014年の日弁連アンケートは示しています)。
それとは別に、親権の取得率は女性が8割を超えています。別居親の割合に男性が多いのは事実ですが、配偶者間暴力の経験がある被害者の数は、女性で3人に1人、男性で5人に1人で、面会交流不全の数とやはり開きがあります。
以上の事実から、別居親のみがDV・虐待・ハラスメントの加害者だと想定することもできません。実際親権取得の男女割合に比して、児童虐待の加害者の割合は、実父の29%に対して、実母は57.3%(2012年)となっています。
この被害の割合と面会交流の取り決め率の開きの原因としては、親権取得のために子を手元に置くことが、弁護士の一般的な手法であることは常識であること(財団法人日弁連法務研究財団『子どもの福祉と共同親権』はしがき、から)が指摘されています。弁護士たちは、子どもと引き離された側から親権をはく奪することを職業柄知っているのでこのような記述をしています。
そうなると、DV・虐待・ハラスメントに関する客観的な認定をもとにして、裁判所が親権や面会交流について決めているとは言い難くなります。
なお、双方の対立関係が強いことについては、たしかに共同での養育の障害となることが想定できますが、必ずしも一方の親の責めにできないのであれば、それを親権はく奪の理由にすることは困難です。特に親権はく奪が自動的になされる別居親にのみその責めを負わせることはフェアさに欠けます。
上記のようなデータ、及び認識に基づき、私どもは面会交流の不全は親権制度の起因する子の奪い合いに対し、性別役割に基づいた男女不平等な民事介入(女性が専ら主体の実子誘拐は介入せず、女性が被害者とされるDVについては介入する)の放置は問題と考え、その改善を訴えています。共同親権とは、子どもの親は両親であり、その両親の関係は対等であるにすぎません。一方の親から親権をはく奪する法制度は人権侵害の解消を求めてきました。言うまでもなく私たちの運動は、「家族生活における個人の尊厳と両性の平等」を定めた憲法24条の理念を実現するためのものです。
そこで質問します。なお、以下の質問は木村氏に対するものですが、それを掲載したのは沖縄タイムズですので、沖縄タイムズの見解が別にあればそれも伺わせて下さい。
1 木村氏の記事では、別居親のみが面会や養育権の審査を受けるという前提で記述され、子を確保した側が親権を得るという「常識」を裏付けているように読み取れます。つまり、木村氏はそのことについて知っていますか。また沖縄タイムズは、そのことに気づいて木村氏の見解を載せましたか。
2 木村氏は「別居親が、主観的に「自分との交流は子の利益になる」と思っていても、DV・虐待・ハラスメントなどの要因で客観的にはそう認定できないことがある。」と述べて、面会交流や養育の機会が奪われることを正当化していますが、弁護士たちが、子の確保が親権取得の要件であることが常識と述べている以上、そのルール以上のDV・虐待・ハラスメントを評価する客観的な判断が裁判所でなされているとは思えません。客観的な評価がなされているという根拠を教えて下さい。こういった問題は、裁判所の人員・運用とは無関係と思います。
3 要するに木村氏は、子どもに会えない親は自分が意識していなくても、「DV・虐待・ハラスメント」の加害者なので、子どもに会えなくても仕方なく、親権が得られなくて当然と考えていますか。また沖縄タイムズ社も同様の見解ですか。
木村氏は、9月2日掲載の記事にて、以下のように述べています。
単独親権者が、子の福祉に反する決定をする危険を指摘するものもいるが、その場合には、親権者を変更すべきだ。共同親権を維持すれば、子の福祉を害する親にまで権利が残ってしまう。
4 私どもの会には、事実婚の破たんとともに、母親である親権者が親権を主張して引き離しを行ない、子どもとの交流が制限された方がいます。そのような方に現行民法でどのような救済措置がありますか。なお、最高裁判所は、子を再婚相手の養子にしたカップルからの実親への親権者変更を認めない決定をしています。代諾養子縁組については、国連子どもの権利委員会が2010年に改善の勧告を日本政府に対してしています。
この質問状は公開のものです。10月15日までに上記住所まで書面にてご回答下さい。
いただいた回答は、当会ホームページ等で掲載することがあります。
沖縄タイムズ質問状・担当なし