1997年に厚生省が実施した人口動態調査の中で、一人親過程の悩みとして、別れた配偶者との面会交流は、男女ともに27%と、進学や就職、接する時間、勉強、情緒面での問題など他の問題と並んで高い数値を示しています。
他の問題が離婚していない家庭に共通する問題もあり、何らかの対策が行政によってとられてきたことを考えると、面会交流の問題の放置は、同居親のニーズにも、行政が応えていないことを示しています。
臨床心理士の小田切紀子さんが2000年から2002年に行った面接調査では、元夫が離婚後も親役割を果たし母親とともに養育に携わることが、子どもだけでなく母親の心理的適応にも好ましい影響を与えていることが明らかになっています(『離婚を乗り越える』)。元夫が養育に対して無責任で養育費と面会交流がない場合、母親は自分自身の抑うつ感や不眠、あるいは子どもへの虐待、子どもの問題行動(不登校、学校での落ち着きのなさ、万引きなど)のために相談機関を利用することが多く、母子ともに不安定な状態となっています。
たとえ家裁で面会交流の取り決めがなされたとしても、誰にも相談することができず、第三者が難しい離婚後の相手方との仲介をしてくれることもありません。面会交流は子どもの福祉と、子どもの権利条約も家裁も認めているのに、行政は一切何もしていないのです。
私たちは、共同養育の実現に向けて、行政機関が離婚家庭支援として、こういった別居親子の相談を受け付け、また児童相談所や子ども家庭支援センターなどを面会交流の場所として活用する、仲介事業を支援するなど、多様な面会交流支援を積極的に進めることを求めています。
こういった困難な離婚後の親子関係の維持を行政が支援することは、単に離婚家庭の利益になるだけでなく、家族問題に困難を抱える家庭や、親のいない家庭など多様な家族関係の維持にとっても役に立つと私たちは考えます。
共同養育を私たちは「子育てのバリアフリー」と位置づけています。
一人親家庭にばかり向けられてきた離婚家庭支援のあり方を、子どもが両親から、そして多くの人から手をかけられる家庭支援のあり方へと転換する。そのためにはまず、官庁や行政担当者の方が単独親権制度の発想から抜け出て、住民の要望に沿った支援を進めることが不可欠です。