まず「なぜ会えないの? 離婚後の親子/どうしてできない? 交替居住」という題で、k-net宗像さんから講演がありました。

宗像さんは人身保護請求で娘さんと引き離されてから、2年半もの間娘さんと引き離されました。後に2カ月に1回2時間の面会交流が始まり、2カ月に1回4時間に拡充されました。これまでに、4回の家庭裁判所手続き、1回の地方裁判所の手続きがなされました。これだけの裁判所手続きを余儀なくされたのは、宗像さんが問題のある別居親であるからだろうか? と言う問題提起がなされました。面会交流調停で何らかの取り決めができるのが43%、4割が履行されないと言われています。この事実は、面会交流が行われないのは同居親が取り決めを履行しないと言う現実を明確に反映しています。
近年の面会交流調停が増加しています。この事実は、「親権が欲しければ子供を連れて家を出ろ」という事実が世間に周知されたことの表れです。家庭裁判所は連れ去り被害者の養育権が侵害されていることに目をつぶります。欧米では実子誘拐・DVを刑事事件として取り扱われますが、日本は民事事件として取り扱われます。日本では十分な調査が行われません。家庭裁判所は同居親による引き離しを、同居親からの一方的な申し出を根拠にDVや子供の意思を理由に正当化します。


親子断絶防止法案の趣旨は既に民法に記載されており、理念の実現は省令・政令で可能です。2016年12月の親子断絶防止法案で、面会交流を制限すべき例外事項について明記されました。例外事項が拡大解釈され、むしろ面会交流が制限される根拠に利用されます。また子どもの意見を聞き取ることが明記されることにより、子供たちはどちらか一方の親を自分の意思で選ばざるを得なくなります。結果的に子供は深く傷ついてしまいます
宗像さんは「共同養育」をより具体化させて、「交代居住」という言葉を使用しています。交代居住ができない背景として、依然として古くからの家同士のつながりを基盤とした結婚観、性的役割分業が考えられます。
両親の離婚後に子供が交代居住することは、子供の権利か? また子供にとって無理やり面会交流をさせられることが良いことか? そのように問いかけられることがあります。しかし、不十分な面会交流しかできない子供たちは、別居親が子供のことを思う心情を理解できないまま大人になります。このような子供が多く育つ社会が、良いはずがありません。

次に「離婚するしないで解決する?」と言う題で、日本家族再生センターの味沢道明さんの講演がありました。味沢さんは京都市山科区で家族再生の活動を30年間継続されています。近年は家族再生のための個別カウンセリング、集団カウンセリングを行う他、シェルターの運営にも携わっています。味沢さんは「男性として生きる」ことに困難を感じ、家族再生の活動を始めることになりました。
そもそも結婚という制度に大きな問題があります。日本では結婚生活が続くことが幸せなこと、離婚することが不幸なことと言われていますが、はたしてそれは本当でしょうか? 家庭内に問題を抱えたまま、結婚生活と言う形だけを維持していくことが良いことでしょうか? 刑事事件の多くは家庭内で起きており、家庭が必ずしも安心できる場所ではありません。
日本では婚外子の割合が2.3%と先進諸国に比べてとても低い水準のまま維持しています。欧米諸国ではここ30年の間に婚外子の割合が大幅に増加し、フランスでは56.7%、スウェーデンでは54.6%に及びます。これらの国々では、カップルが子供を得るのに、結婚する必要がありません。これらの国々は、離婚率が高いという傾向があります。
家庭問題を解決する上で、大切なのは「離婚をするかしないか」ではなく、「家族の形にかかわらず、家族がお互いを信頼しあえる関係を築くこと」です。その意味ではお互いに信頼しあえる関係をつくることができれば、離婚していてもしていなくても幸せな家族になります。
日本では家族問題に対して修復的な支援が乏しいです。一つの理由として、お金にならないからです。私は当事者が回復すること、支援が成功することとは、当事者自身が生き方を見直して、家族全員が幸せになるように行動できるようになることだと考えます。そのために当事者は2週間に1回ほどのセッションを2年間ほど行います。
修復的な支援のために大切なことがいくつかあります。
1.家族問題は個人の問題ではなくて、個人が生きにくさを感じる社会の問題としてとらえること。
2.援助者は善悪の判断を行わずに支援をしていくこと。
3.多様な家族像・ライフスタイルを受け入れること。
4.当事者との対話の中から何が問題なのか導くこと。
5.家族構成員みんなの幸せのために最善を模索すること
6.たらいまわしではなく、ワンストップで機能する複合的な支援であること。
7.支援者が当事者とおなじ高さから支援すること
今の日本の制度では、離婚後に別居親が自分の子供と会えないケースも出てきます。決して今の制度を肯定するわけではないが、会えなくても幸せがあります。親と引き離された子供たちとの交流をお勧めします。子供たちとコミュニケーションを取ることで信頼関係を築くことができれば、それが家族ではないでしょうか。(1145文字)

質疑応答がでいくつか質問が出されました。
―講演の中で、当事者がかつての脱法行為をさらけ出して話すというエピソードが示されました。当事者に自己開示させる秘訣は何でしょうか?―
私は、かつてアルコール依存症で苦しんだ過去があります。また元部下からセクハラ訴訟を起こされ敗訴したことがあります。このように自分の汚点も含めて自己開示すると、かえって当事者は自分自身をさらけ出してくれます。
―私もかつて元夫のDVで悩みました。しかし夫は別居に応じてくれない、かといって警察に相談したら、夫が犯罪者になってしまう。子供の生活を考えると家にいるしかない。結果的にその後私は子供と引き離されることになるのですが、その時どうすれば良かったでしょうか?―
子供と京都旅行すると言って、家族再生センターに来てください。私は夫を責めることをしませんので、時間がたてば夫が態度を変えて迎えに来ます。あなたも夫のDVに対応できる能力を身に付けられます。(細川 洋)