家事審判法(抄)
公布:昭和22年12月26日
施行:昭和23年1月1日
最終改正:平成11年法151、法152
<第1章 総則(抄)>
第1条(目的) この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を基本として、家庭の平和と健全な親族共同生活の維持を図ることを図ることを目的とする。
第2条(家事審判官) 家庭裁判所において、この法律に定める事項を取り扱う裁判官は、これを家事審判官とする。
第3条(審判、調停の機関) 審判は特段の定のある場合を除いては、家事審判官が、参与員を立ち合わせ、またはその意見を聴いて、これを行う。但し、家庭裁判所は、相当と認めるときは、家事審判官だけで審判を行うことができる。
2 調停は、家事審判官及び家事調停委員をもって組織する調停委員会がこれをこれを行う。前項ただし書の規定は、調停にこれを準用する。
3 家庭裁判所は、当事者の申立があるときは、前項後段の規定にかかわらず、調停委員会で調停を行わなければならない。
第4条・・・略
第5条及び第6条・・・削除
第7条及び第8条・・・略
<第2章 審判(抄)>
第9条(審判事項の分類) 家庭裁判所は次に掲げる事項について審判を行う
甲類・・・略
乙類
(1)民法第752条の規定による夫婦の同居その他の夫婦間の協力扶助に関する処分
(2)民法第758条第2項及び第3項の規定による財産の管理者の変更及び共有財産の分割に関する処分
(3)民法第760条の規定による婚姻から生ずる費用の分担に関する処分
(4)民法第766条第1項又は第2項(同法第749条、第771条、及び第788条において準用する場合を含む)の規定による子の監護者の指定その他子の監護に関する処分
(5)民法第768条第2項の規定による財産の分与に関する処分
(6)民法第769条第2項又は第897条第2項の規定による同条第1項の権利の承継者の指定
(6の2)民法第811条第4項の規定による親権者となるべき者の指定
(7)民法第819条第5項又は第6項の規定による親権者の指定又は変更
(8)民法第877条ないし第880条の規定による扶養に関する処分
(9)民法第892条ないし第894条の規定による推定相続人の廃除およびその取消
(9の2)民法第904条の2第2項の規定による寄与分を定める処分
(10)民法第907条第2項および第3項の規定による遺産の分割に関する処分
2 家庭裁判所は、この法律に定めるものの外、他の法律において、特に家庭裁判所の権限に属させた事項についても、審判を行う権限を有する。
第10条(参与員) 参与員の員数は、各事件について1人以上とする。
2 参与員は、家庭裁判所が毎年前もって選任する者の中から、家庭裁判所が各事件について、これを指定する。
3 前項の規定により、選任される者の資格、員数その他同項の選任に関し必要な事項は、最高裁判所がこれを定める。
第10条の2・・・略
第11条(職権調停) 家庭裁判所は、何時でも、職権で第9条第1項乙類に規定する審判事件を調停に付することができる。
第12条(利害関係人の参加) 家庭裁判所は、相当と認めるときは、審判の結果について利害関係を有する者を、審判手続に参加させることができる。
第13条(審判の発効) 審判は、これを受ける者に告知することによってその効力を生ずる。但し、即時抗告をすることのできる審判は、確定しなければ、その効力を生じない。
第14条(即時抗告) 審判に対しては、最高裁判所の求めるところにより、即時抗告のみをすることができる。その期間は、これを2週間とする。
第15条(審判の執行力) 金銭の支払、物の引渡、登記義務の履行、その他の給付を命ずる審判は、執行力ある債務名義と同一の効力を有する。
第15条の2(戸籍記載等の嘱託) 第9条第1項甲類に掲げる事項についての審判が効力を生じた場合、または次条第1項の規定による審判が効力を生じ、若しくは効力を失った場合には、裁判所書記官は、最高裁判所の定めるところにより、遅滞なく戸籍事務を管掌する者又は登記所に対し、戸籍の記載又は後見登記等に関する法律に定める登記を嘱託しなければならない。
第15条の3(審判前の保全処分) 第9条の審判の申立があった場合においては、家庭裁判所は、最高裁判所の定めるところにより、仮差押え、仮処分、財産の管理者の選任その他の必要な保全処分を命ずることができる。
2 前項の規定による審判(以下、「審判前の保全処分」という)が確定した後に,その理由が消滅し、その他事情が変更したときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。
3 前2項の規定による審判は、疎明に基づいてする。
4 前項の審判は、これを受ける者に告知することによって、その効力を生ずる。
5 第9条に規定する審判事件が高等裁判所に係属する場合には、当該高等裁判所が、第3項の審判に代わる裁判を行う。
6 審判前の保全処分(前項の裁判を含む。次項において同じ)の執行および効力は、民事保全法その他の仮差押え及び仮処分の執行、及び効力に関する法令の規定に従う。この場合において、同法第45条中「仮に差し押さえるべき物又は係争物の所在地を管轄する地方裁判所」とあるのは「本案の審判事件が係属している家庭裁判所(その審判事件が高等裁判所に係属しているときは、原裁判所)」とする。
7 民事保全法第4条、第14条、及び第20条から第24条までの規定は、審判前の保全処分について、同法第33条及び第34条の規定は、審判前の保全処分を取り消す審判について準用する。
第15条の4・・・略
第15条の5(義務履行の勧告) 家庭裁判所は権利者の申出があるときは、審判で定められた義務の履行状況を調査し、義務者に対して、その義務の履行を勧告することができる。
第15条の6(義務履行の命令) 家庭裁判所は審判で定められた金銭の支払、その他財産上の給付を目的とする義務の履行を怠った者がある場合において、相当と認めるときは、権利者の申立により、義務者に対し、相当の期限を定めて、その義務の履行をなすべきことを命ずることができる。
第15条の7及び第16条・・・略
<第3章 調停(抄)>
第17条(調停事件の範囲) 家庭裁判所は、人事に関する訴訟事件その他一般に家庭に関する事件について調停を行う。但し、第9条第1項甲類に規定する審判事件については、この限りでない。
第18条(調停前置主義) 前条の規定により、調停を行うことができる事件について、訴を提起しようとする者は、まず家庭裁判所に調停の申立をしなければならない。
2 前項の事件について、調停の申立をすることなく訴を提起した場合には、裁判所は、その事件を家庭裁判所に付しなければならない。但し、裁判所が事件を調停に付することを適当でないと認めるときは、この限りでない
第19条(受訴裁判所の職権調停) 第17条の規定により調停を行うことができる事件に係る訴訟が係属している場合には、裁判所は、何時でも、職権でその事件を家庭裁判所の調停に付することができる。
2 前項の規定により事件を調停に付した場合において、調停が成立し又は第23条若しくは第24条第1項の規定による審判が確定したときは、訴の取下があったものとみなす。
第20条(利害関係人の参加) 第12条の規定は調停手続にこれを準用する。
第21条(調停の成立・効力) 調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。但し、第9条第1項乙類に掲げる事項については、確定した審判と同一の効力を有する。
2 前項の規定は、第23条に掲げる事件については、これを適用しない。
第21条の2・・・略
第22条(調停委員会の組織) 調停委員会の組織は、家事審判官1人及び家事調停委員2人以上とする。
2 調停委員会を組織する家事調停委員は、家庭裁判所が各事件について指定する。
第22条の2及び第22条の3・・・略
第23条(合意に相当する審判) 婚姻又は養子縁組の無効又は取消しに関する事件の調停委員会の調停において、当事者間に合意が成立し無効又は取消しの原因の有無について争いがない場合には、家庭裁判所は、必要な事実を調査した上、当該調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴き、正当と認めるときは、婚姻又は縁組の無効又は取消しに関し、当該合意に相当する審判をすることができる。
2 前項の規定は、協議上の離婚若しくは離婚の無効若しくは取消、認知、認知の無効若しくは取消、民法第773条の規定により父を定めること、嫡出子の否認又は身分関係の存否の確定に関する事件の調停委員会の調停に、これを準用する。
第24条(調停に代わる審判) 家庭裁判所は、調停委員会の調停が成立しない場合において相当と認めるときは、当該調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴き、当事者双方のため衡平に考慮し、一切の事情を見て、職権で、当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で、事件の解決のため離婚、離縁その他必要な審判をすることができる。この審判においては、金銭の支払その他財産上の給付を命ずることができる。
2 前項の規定は、第9条第1項乙類に規定する審判事件の調停については、これを適用しない。
第25条(異議の申立て) 第23条又は前条第1項の規定による審判に対しては、最高裁判所の定めるところにより、家庭裁判所に対し異議の申立をすることができる。その期間は、これを2週間とする。
2 前項の期間内に異議の申立があったときは、同項の審判は、その効力を失う。
3 第1項の期間内に異議の申立がないときは、同項の審判は、確定判決と同一の効力を有する。
第25条の2(調停で定められた義務の履行確保) 家庭裁判所は、調停又は第24条第1項の規定による審判で定められた義務の履行について、第15条の5から第15条の7までの規定の例により、これらの規定に掲げる措置をすることができる。
第26条(調停不成立の場合の取扱い) 第9条第1項乙類に規定する審判事件について、調停が成立しない場合には、調停の申立の時に、審判の申立があったものとみなす。
2 第17条の規定により調停を行うことができる事件について調停が成立せず、且つ、その事件について、第23条若しくは第24条第1項の規定による審判をせず、又は第25条第2項の規定により審判が効力を失った場合において、当事者がその旨の通知を受けた日から2週間以内に、訴を提起したときは、調停の申立の時に、その訴の提起があったものとみなす。
<第4章 罰則(抄)>
第27条(不出頭に対する過料) 家庭裁判所又は調停委員会の呼出を受けた事件の関係人が、正当な事由がなく出頭しないときは、家庭裁判所は、これを5万円以下の過料に処する。
第28条(履行命令等の不服従に対する制裁) 第15条の6又は第25条の2の規定により義務の履行を命ぜられた当事者、又は、参加人が正当な事由がなくその命令に従わないときは、家庭裁判所は、これを10万円以下の過料に処する。
2 調停委員会又は家庭裁判所により、調停前の措置として、必要な事項を命ぜられた当事者又は参加人が、正当な事由がなくその措置に従わないときも、前項と同様である。
第29条(過料の審判の執行) 前2条の過料の審判は、家事審判官の命令でこれを執行する。この命令は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する。
2 過料の審判の執行は、民事執行法(昭和54年法律第4号)その他強制執行の手続に関する法令の規定に従ってこれをする。ただし、執行前に審判の送達をすることを要しない。
3 非訟事件手続法第207条及び第208条の2中、検察官に関する規定は、第1項の過料の審判にはこれを適用しない。
第30条及び第31条・・・略