12月19日、kネットでは大正大学教員で臨床心理士でもある青木聡さんを国立に招いて、ワークショップ「別居親相談の現場から」を
開催した。
青木さんのお話は、アメリカの心理学の学会や弁護士の間で、片親引き離し症候群(PAS)がどのように扱われてきたかを、学説の変遷や論争の経過をたどりながら紹介するものだった。
少し前には日本でも弁護士を中心に、アメリカの論文を紹介しながらPASを否定する見解が表明されたことがあった。
アメリカでも、心理学会や弁護士の団体を中心に、PAS概念を否定する見解が述べられたことがあったという。
しかし、現在のアメリカでは、PASが広く認知されていて、分厚い議論の積み重ねがある。
2008年の時点で、「片親疎外」に関する論文は265、「PAS」についての論文は244、
「片親疎外」の書籍は355冊に及ぶという。
今年、アメリカで開かれた国際家庭裁判所/調停裁判所協会の大会に出席した青木さんは、その内容のすべてが面会交流と片親疎外に関する議論に費やされたことを報告している。
法制化の議論が高まるとともに、日本では別居親対シングルマザーという対決構図で物事が語られることが少なくない。
青木さんはアメリカでは、虐待の問題と片親疎外の問題は別の文脈で議論されていると説明していた。
片親疎外の問題は離婚の文脈でも現在では扱われていないという。
ワークショップには、離婚して子どもを相手に会わせたいし、実際そうしているという母親も来ていた。
現場での感覚も、どちらかというとすでに法律の不備を知った上で、ワンパターンの対決構図にどうやったら入り込まなくてすむかという相談が最近は多い。
kネットのほうでも、相談と支援や講座の担当者からの報告がなされたが、kネットの実践が、アメリカでの片親疎外への対処に照らしても、あまりかけ離れていないということも確かめられた。
こういった国際的な議論の推移と、現場での対処の積み重ねを共有化していくことも、これからの運動においては必要なことと感じられた。