この記事は過去にk-net代表の宗像充が参加した活動に関して、当時宗像が作成、関連団体への転載を許可したコンテンツです。過去の活動記録の一環として収録しています。

6月23日、子どもに会えない親、会うのが難しくなっている親4人と、在外フランス人議会議員ティエリ・コンシニさん他計7名で法務省に親子の面会についての法整備を求めて要請に行きました。

冒頭私たちは、朝日新聞での報道がなされていた国家間の子どもの連れ去り行為を禁じたハーグ条約について、法務省の金子修参事官に聞きました。
金子さんは、ハーグ条約の批准については省内で検討に入ったが、ハーグ条約の言う中央当局については、法務省がなるかは未定と述べました。
また、ハーグ条約にともなう、親子の面会などについての法整備についてはとくに考えておらず、履行勧告や間接強制もあるのだから、民法766条で、親子の 面会についての手続きは保障されていると言いました。面会拒否に対する、罰則などについても、監護親の協力がなければ面会は実現しないのだから、実現は難 しい……。

私たちは、実際の事例を紹介しながら手続きがあることと、実効性があることは別問題で、現在の法律では、実際には子どもを見ている側が面会の有無を決めていいことになっていると指摘しました。
その上で、罰則で面会を実現するのは避けたほうがいいにしても、当事者親子を救済し、実効性を持たせるためには強制力は必要だし、また、面会がスムーズにいくための支援体制は今のところ皆無であると主張しました。

別れた後も双方の親が子どもを見るという点では共同親権が望ましいあり方だし、面会についても、共同親権であれば柔軟に対応できると私たちは指摘しました。
会談は1時間半に及び、活発な意見交換がなされました。
以下は当日の申し入れ書です。(宗像)

離婚後の親子の面会交流についての要望書
鳩山邦男法務大臣様
倉吉敬民事局長様
富田善範人権擁護局長様
2008年6月23日
親子の面会交流を実現する全国ネットワーク
宗像 充

私たちは離婚、別居後、子どもを見ている親の側の拒否によって、自分の子どもと会えなくなっている、または会うのが難しくなっている親たちのグループです。
離婚は夫婦関係の解消であり、親子関係の断絶ではないはずです。しかし実際には、別居や離婚を契機に、意思に反して関係が絶たれてしまった親子が多数あり、その実数すら政府は把握していません。
戦後婚姻関係についての法改正が一度も行われなかった現在の民法は、離婚後の単独親権制度をとっています。これは先進諸国では、日本にのみ残された制度 です。面接交渉(面会交流)は裁判所の判例としては定着していますが、裁判所で調停や審判、裁判などを経た場合、明文規定のない面会交流は、欧米諸国に比 べ限定的にしか認められていないのが実態です。また、裁判所での合意も強制力がないため、実際にはささいな理由から、親子の交流が途絶えてしまうこともあ ります。
意思に反した親子関係の断絶は、親子双方に破壊的な影響を与えます。私たちの会にも、鬱状態になった親がたくさんいます。離婚という事件を経た子どもに とって、愛着対象としての親から引き離されることは、二重の精神的な負担です。欧米ではこれは人権侵害で虐待であると考えられています。その上、昨今の親 権をめぐる殺傷事件に象徴的に表されるように、法の保障がないため、親子の関係を絶たれてしまうのではないかという恐怖は、親どうしの子どもの奪いを激化 させています。子どもの権利条約は、離れて暮らす親とも定期的で直接の接触を維持する権利を尊重するよう締約国に課していますが、実態は条約とはかけ離れ ています。
日本政府は、2004年に国連子どもの権利委員会で、親子非分離について定めた子どもの権利条約9条について、委員会から「懸念」を表明されています。ま た国家間の子の奪取についてのハーグ条約を批准するよう勧告されています。しかし、今年4月の第三回政府報告書においても、9条の解釈を政府は変えません でした。現行の法制度及び日本政府の見解は、国際的な評価に耐え得ないことは明らかです。早急に親子関係についての法整備を行なうとともに、国内外を差別 することなく、正当な理由なく引き離されている親子を救済してください。

要望項目
1.ハーグ条約を批准し、面会拒否に対する罰則の付与や監護者変更などを内容とする、実効性のある面会交流を保障する法整備を早急に行ってください。
2.離婚後の共同親権を実現し、親子関係の権利義務を明示した法整備を行ってください。
3.子どもの権利条約に準じ、離婚後も両親双方が子どもの面会交流に関わることが子どもの最善の利益であるとの考えのもと、面会交流についてのガイドラインを作ってください。
4.離婚に際し、親どうしの葛藤と親子関係を分けて考える親教育プログラムを実施してください。
5.児童虐待などが立証されない別居、離婚後の親子の引き離しを人権侵害行為として、法務省の人権擁護機関で対処する事例として取り上げてください。
6.離婚後の親子の面会交流を促進するための啓発活動を行なってください。
以上の要望への回答は、7月10日までに、上記の住所に文書にて回答してください。